ECO-TOPプログラムの認定を受け、平成26年4月よりカリキュラムをスタートした
武蔵野大学の村松陸雄教授にお話を伺いました。
‐今年度よりECO-TOPプログラムを導入されたわけですが、このプログラムを導入しようと考えたきっかけを教えてください。
1つ目は、ECO-TOPプログラムを通して、学生が行った活動が公的(東京都)に認められる点ですね。あくまでも資格制度ではないのですが、自分たちが行う活動がしっかりと認定される制度があると学生たちの意欲も上がりますし、就職活動でのアピールにつながるのではないかと思います。これまでも「サステナビリティプロジェクト」という本学独自のプログラムにより産学官連携の枠組みで積極的に環境保全活動に取り組んでまいりましたが、今回、ECO-TOPプログラムに参加することで、オフキャンパスの現実社会の文脈の中で"生きた"環境学を学ぶ機会がさらに充実することはとても歓迎すべきことです。
2つ目は、多様なインターンシップの受け入れ先があることです。大学単独でのインターンシップ先の開拓にはどうしても限界があります。ECO-TOPプログラムを通じて、これまで付き合いのなかった行政・企業・NPOに行ける機会が増えることは、非常に大きなメリットだと思います。大学で学んだことをインターンシップ先で実際に見て・触れて・体験することによって、より深く理解することもできます。
3つ目は、複数の大学間での交流機会が得られることです。ECO-TOPプログラムインターンシップ合同報告会において、他大学の学生と本学の学生が活発に意見交換する機会があることやエコプロダクツ展等に共同で出展参加することは、とても貴重な経験になると思います。
‐インターンシップに魅力を感じていらっしゃるとのことですが、これまでのインターンシップはどのように取り組まれていたのですか?
これまで本学におけるインターンシップは、全学共通の基礎課程「武蔵野INITIAL」の一環として実施してきました。学生は必ずしも環境学を専攻する学生に限らないため、インターンシップの派遣先もサービス業を中心とした幅広い業種を対象としています。サステナビリティ学科の学生が持続可能性や環境とは関係がない業種でインターンシップを経験することにも貴重な学びがあることは言うまでもありませんが、サステナビリティ学科の教員の立場としては、SDGs、自然保護、環境保全、生物多様性、といったより専門科目に近い業種でインターンシップさせたいと、常々、思っておりました。
ゼミや研究室の先生方の個人的なつながりを伝って所属する学生を環境関連のインターンシップに派遣することはこれまでもありましたが、知り合いがいるNPOや企業等に限定されてしまいがちで、その点、ECO-TOPプログラムでは行政・企業・NPOとバランス良くインターンシップに行けるのは素晴らしいことだと思います。
‐インターン先に期待したいことは何ですか?
できるだけ多くの学生たちを受け入れてもらいたいな。というところですね(笑)
私もその昔に、一般企業に勤めていましたので、インターンシップを受け入れることの大変さを存じ上げているつもりですが、持続可能な未来を担う次代の環境人材を国全体で育むために、インターンシップ先は、まさにCSR(企業の社会的責任)の発想で、学生たちを受け入れていただけることを切に願っております。
ただ、インターンシップ先に一方的なご負担をおかけするだけでは、インターンシップ制度を永続的に持続させることができません。Win-Winな関係になるべく、インターンシップ先にもメリットがある学生を派遣するために大学としては最大限の努力を払いたいと思っています。派遣候補の学生には、事前学習を必修として、インターンシップの目的意識や学習目標を明確にするために、ビジネスマナー・心構え・実習オリエンテーション・実習先の研究等、職業意識を啓発させます。個人面談により、学生の意欲ややる気といったところもしっかり判断した上で、インターンシップに学生を派遣します。
‐今後のECO-TOPプログラムの運営に期待したいことはありますか?
本学はまだまだ制度を導入したばかりの段階で、プログラムを実際に運営していく際には様々な課題に直面することが予想されます。すでに多数の登録者を輩出されている先達の大学の皆さまの頭の中にある暗黙知的なノウハウ、例えば、学内調整の進め方、事前・事後教育の具体的な内容、インターンシップ先の開拓方法など、を幅広く共有できたらいいなと思います。そのような運営体制が構築できると、新規参入を検討している大学関係者に対するハードルも低くなると思います。
ECO-TOPプログラム単位互換制度の新設を提案します。他大学のECO-TOP関係授業の履修を相互に認めるというものです。他校の授業カリキュラムを拝見すると、例えば「江戸から学ぶ環境」とか面白そうな科目もあるので・・・。同様な試みとして、大学コンソーシアム京都がプラットフォームとなっている単位互換制度はとてもうまくいっていると伺っております。
‐ECO-TOPプログラムを履修する学生に期待することは何ですか?
ECO-TOPプログラムのパンフレットには目指すべき人材育成像を「環境分野のジェネラリスト」と明記されておりますが、これは本学の環境学科のディプロマポリシーとほぼ一致しており、「我が意を得たり」といった心境です。
自然環境保全の現場(企業・NPO・行政)でのECO-TOPインターンシップを通して獲得した経験知と、ECO-TOPカリキュラムに基づいて修得した環境学の広くて深い知識を武器に、環境保全や自然保護などの狭義の意味での環境分野だけなく、さまざまな職種で持続可能な社会の構築のためにリーダーシップを発揮できる人材になってもらいたいと思っております。
‐ECO-TOPプログラムを導入されて苦労された点はありますか?
ECO-TOPプログラムの導入プロセスを経験することを通して、「何か新しいことを始めることは困難がつきものである」という当たり前(?)の定理を再認識しました。大学の教学スタッフや事務職員とも許容量ギリギリレベルに達するであろう多くの日常業務を抱えているところに、村松が訳のわからない新しい仕事をもってきたという感覚だったかもしれません。関係者に申請のための必要書類を短期間に準備していただくことを依頼しなければならなかったことや申請書の全体を取りまとめる作業が予想以上に大変でした。
今、課題として感じているのはECO-TOPプログラムについての認知度が低いことです。ECO-TOPプログラムを今年度から取り入れていますが、まだまだ知らない学生が大勢います。本学における学生に対する情報発信は、すべて学内イントラネットを通じてオンラインで行っておりますが、ネット上の様々な情報に埋没してスルーされている可能性があります。今後、アナログ的な説明会を数回、実施することで、ECO-TOPプログラムのことを学生にうまく伝えていきたいですね。
大学には、今回、導入したECO-TOPプログラムを含めて様々な学習機会や学生支援制度がありますが、それらは概して「求めよ、さらば与えられん。」的に主体的な参加を要するものが多いです。学生諸君にはこういった制度やプログラムを有効に活用して、大学を大いに使い倒してもらうことを願っています。
‐大学の視点で考えますと今回ECO-TOPプログラムを通じて授業に外からの風が入ることに抵抗はありませんでしたか?
抵抗はまったくございません。むしろ歓迎すべきことです。
武蔵野大学が重視している能力に、「進化し続ける力」があります。本学には常に新しいアイデアを取り入れて変革することを良しとする学風がありますので、今年度からスタートしたECO-TOPプログラムを通じて学生が様々な体験をし、プログラムに参加した学生のみならず、大学自体が大いに進化することを期待しています。
‐本日は貴重なお話ありがとうございました。